急性期呼吸リハビリテーションにおけるポジショニングの「攻め」と「守り」

守りのポジショニング 攻めのポジショニング

急性期で呼吸器疾患を担当すると必ず必要とされる知識、技術。

それは「ポジショニング」である。

そんな事かと思う人が多いだろう。

しかしながら、「ポジショニングの目的は?」

と聞かれて多くの人が

「体位ドレナージ」

「褥瘡予防」

と答える。もちろん間違ってはいない。

ただ、それはポジショニングを

「攻め」と「守り」で意識をしている人は多くない。

その二つの要素を意識すると

ポジショニングに対する、より専門的な知識が身に付くと共に

あなたの明日からの臨床が変わります。

 

ポジショニングの必要性

 

先ず仰臥位が呼吸機能に及ぼす影響について考えてみよう

呼吸器系

・胸郭コンプライアンス低下

・TLC(全肺容量)減少

・FRC(機能的残気量)減少

・ERV(呼気予備量)減少

・VC(肺活量)減少

泌尿器系

・尿量減少

・UTI(尿路感染症)発生

・尿路結石の助長

消化器系

・便秘

・食欲低下

・イレウスの助長

循環器系

・心拍出量低下

・起立性低血圧

・運動耐用能低下

筋・骨格系

・関節拘縮

・筋力低下

・骨委縮

・褥瘡

精神神経系

・うつ病

・せん妄

・認知症(仮性含む)

・見当識障害

など多種多様の影響が考えられます。

 

特に高齢者においては、肺炎での入院をキッカケに認知症を発生、歩行が出来なくなったという事例は少なくありません。

 

仰臥位では腹腔内臓器は重力により背側に偏る。背側の肺を圧迫する事で

肺コンプライアンス低下

→肺容量低下が起きてしまう。

また、気道内分泌物が貯留、滞留すると末梢気道が閉塞し無気肺に陥る。

それらを改善する為にも体位変換を行うポジショニングは重要である。

 

改めて「攻め」「守り」とは

先ず、守りのポジショニングで代表されるのは仰臥位ですね。

目的としては安静、鎮痛、循環動態の是正などが

挙げられますよね。

次に半側臥位、主に30度以下の側臥位を表します。

褥瘡予防や改善に重要な行為です。

これらの肢位はICUで重要な役割を持ちます。

次に攻めのポジショニング

前傾側臥位、45°程度の側臥位を指します。

ここで初めて体位ドレナージ、荷重測肺障害の改善、肺胞換気

などにアプローチ出来ます。

最後に腹臥位。これは非常に難易度が高いです。

これらを必要とする方は人工呼吸器、輸液、尿道カテーテル

などなど、非常に多くのラインが繋がっています。

ポジショニング全般に言えますが、特に前傾側臥位、腹臥位など

攻めのポジショニングには療法士だけでなく医師や看護師、臨床工学技士など

チームでの実施が重要です。

 

「攻め」と「守り」の選択

さて、守りと攻めを理解した上で大事なのは

対象者に「今」必要なポジショニングが何かを考える事です。

そして、選択したポジショニングが出来る状態にあるのか?

実行するメリット、デメリットを考える必要があります。

例えば、術後で出血もあり、循環動態が安定していない方に

腹臥位や前傾側臥位を実施する事はありません。

まあ、そこは何となくイメージがつくでしょう。

難しいのは段々と落ち着いてきた時

いつ、攻め始めるのか?

医師は「ギャジアップ〇〇°まで」など

処方箋や電子カルテの中で指示を出している事が多いです。

しかしながら、それらは頻繁に更新はされません。

その更新を待っていては攻めるタイミングを逃します。

回診で共有する事が望ましいですが

それ以外にも直接、医師に

前傾側臥位やギャジアップをしていきたい旨を説明し許可を得ていく。

ここが療法士の腕の見せ所?かもしれません。

 

いざ攻めてみよう

 

前傾側臥位を実施するにあたり

多くの人が出来ていない、理解が不十分なのが

ポジショニングを固定する枕です。

体位ドレナージ目的に前傾側臥位にしても

背部全体に枕や布団などをセットされていると

背部胸郭のコンプライアンス改善は低く

目的は達成出来ません。

肩甲骨、骨盤あたりで最小の固定で行う事が望ましいです。

また、担当看護師との連携が取れていない事例で多いのが

療法士は攻めを意識して前傾側臥位

看護師は守りを意識して半側臥位

療法士の言い分

「目的を持って攻めてるのに、何で元に戻すんだよ」

看護師の言い分

「こんなに横に向けたら褥瘡出来るかも、仰臥位(半側臥位)に戻そう」

・・・チーム医療の崩壊です(;’∀’)

肌感覚ではICUより一般病棟で多い事例です。

これらの問題はどこにあるのか?

単純にコミュニケーション不足ですね。

療法士も目的を適切に伝える事で防げます。

療法士「〇〇さんの右肺、背側の動きを出したいので45°の左側臥位にしてます

現在、褥瘡など無いようです、1時間程度はそのままにしておいてください」

看護師「分かりました。確かに夜間帯、右肺の方が副雑音が大きいですよね」

と言った具合で夜間の情報など生の情報交換にも繋がります。

 

まとめ

ポジショニングを漫然とルーティン化せず、目的を明確にしよう。

その目的、効果検証を多職種で共有しよう

日に数回は患者の背中を見よう(背部への圧を除く事が背側胸郭の動きを引き出す)

攻めのタイミングを逃すと(合併症や回復遅延で)患者の予後に悪影響

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です